山口薫のブラック・ボックス
黒い函にはなにがあるのか?

無題

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先日



ある街で猫を見た。





痩せ衰えて



あとは死を迎えるのを待つだけの黒猫





クロちゃんもどこかで



こんな風になってるのかもしれない。






この一年



僕には人生の大波が襲ってきた。





いまだから言えるが



生きていてもしかたないと思えた。





肉体も精神もボロボロになっていた時に



知り合ったのがクロちゃんだ。





毎朝



また目が醒めてしまった。





どうして夜のうちに死ななかったのだろうかと



シニカルになった僕が



クロちゃんにカリカリをあげる楽しみをもらった。





クロちゃんは決してペコペコしない。




僕とクロちゃんは対等な立場だ。





カリカリは食べてもらっていたし



からだは掻かせていただいた。





クロちゃんは15歳以上



人間ならば90歳以上といえるだろう。





僕なんかよりもはるかに徳の高い猫なのだ。





今回の引っ越しの時



どこに住んでもいい僕は



クロちゃんがいるからこそこの街に残った。





そして前回の失踪事件。





あの時


街のみんなは半分以上あきらめていた。




もうクロちゃんには逢えないと。





しかし


クロちゃんは帰って来た。





ふた回り以上ちいさくなって。






あきらかにクロちゃんは衰えていた。





じっとしていても辛そうだった。






今回の失踪はクロちゃんが家出したんじゃなくて



パトロール中になにかがあって帰れなくなったんだと思う。






前回帰って来たのは奇跡だろう。




クロちゃんは人生最後の時間を



みんなと過ごすために戻ってきてくれた。






奇跡がもういちど起こることを祈る。






でももしもう天国にいるのならば



僕をまっていてほしい。






こんどはちゃんとお礼を言いたい。







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